アメリカで教育資金を準備する方法の一つとして、多くの家庭が活用している529プラン。529プランは、教育目的で利用すれば税制優遇を受けられるのが大きなメリットです。しかし、「使いきれずに資金が余ってしまった」「学費以外に使いたい」という場合には税金やペナルティが発生する可能性があります。
特にカリフォルニア州など一部の州では、連邦税だけでなく州税のペナルティも課されることをご存じでしょうか?また、新たな選択肢として2024年から529プランの残高をRoth IRAへロールオーバーすることが可能になりました。
今回は、学費以外で使う場合にかかる税金やペナルティについて詳しく解説し、できるだけ負担を避ける方法とRoth IRAへのロールオーバーの条件についてもご紹介します!
学費以外で使うとどんな税金がかかるのか?
529プランは、大学や専門学校の授業料・寮費・教材費などの教育費に使う場合、運用益が非課税になります。ただし!学費以外の目的でお金を引き出すと、税金やペナルティが発生するので注意が必要です。教育関連費用とはいえ、これらもペナルティの対象となります。
● 交通費
● 大学出願や試験に関連する費用
● 課外活動に関連する費用
● 健康保険料
● その他、教育費用に含まれないすべての費用
学費以外で引き出した場合にかかる税金・ペナルティ
連邦税(IRS)
- 10%のペナルティ税:引き出したお金のうち、「元本」ではなく「運用益」に対して課税される。
- 所得税:運用益部分が所得としてカウントされ、通常の所得税がかかる。
州税(各州ごとに異なる)
※各州のペナルティ(外部サイトへ飛びます)
- 一部の州では、さらに追加のペナルティが発生する。
- カリフォルニア州では、学費以外の用途で使うと2.5%の州所得税ペナルティが発生する。
例えば、カリフォルニア州在住の人が$10,000(うち$4,000が運用益)を学費以外の用途で引き出した場合、以下のような税負担が発生します。
税金の種類 | 課税対象 | 税率 | 計算例($4,000の運用益) |
---|---|---|---|
連邦ペナルティ税 | 運用益部分 | 10% | $400 |
連邦所得税 | 運用益部分 | 例:22% | $880 |
CA州ペナルティ税 | 運用益部分 | 2.5% | $100 |
合計負担額 | - | - | $1,380 |
つまり、引き出した$10,000のうち、実質$1,380が税金として引かれてしまいます!
参考サイト:https://www.savingforcollege.com/intro-to-529s/what-is-the-penalty-on-an-unused-529-plan
2. できるだけペナルティを避ける方法
「529プランに資金が余ってしまったけど、ペナルティなしで引き出せないの?」と疑問に思う方も多いでしょう。以下の方法を活用すれば、ペナルティを回避または軽減できます。
① 受益者 (Beneficiary)を変更する
529プランの受益者(Beneficiary)を家族内で変更することで、引き続き教育目的に活用できます。受益者として変更できるのは、以下の家族メンバーです:
- 兄弟姉妹
- 配偶者
- 両親や祖父母
- 叔父・叔母、いとこ
例えば、長男が大学を卒業して余った529プランの資金を、次男の学費に使うことができます。
② 学生ローンの返済に充てる
2019年に施行されたSECURE Actにより、最大$10,000までの529プラン資金を学生ローンの返済に充てることが可能になりました。学生ローンを抱えている家族がいる場合、このオプションは非常に有効です。
③ 529プランの資金をRoth IRAへロールオーバーする
新しい制度により、2024年以降、529プランの未使用資金をROTH IRAへロールオーバーできるようになりました! これにより、教育目的以外に使えずに残っていた資金を退職資金として活用することが可能になります。
Roth IRAへロールオーバーする際の条件
- 529プランが15年以上開設されていること
- 年間のロールオーバー上限は$7,000まで
- 生涯ロールオーバー上限は$35,000
- 受益者(Beneficiary)がRoth IRAの所有者と同じであること
- 過去5年間に拠出された資金は対象外
ここに注意!
529プランの受益者(Beneficiary)を変更すると15年ルールがリセットされる
例えば、子どもから親に受益者を変更してすぐにロールオーバーしようとしても、リセットされるため再び15年待つ必要がある。
他のROTH IRA拠出と合算される
たとえば、通常の給与所得からすでに$4,000をRoth IRAに拠出している場合、その年の529プランからのロールオーバーは最大$3,000までに制限される。
ロールオーバーをする際は、受益者(Beneficiary)は働いていないといけない
通常のRoth IRAと同じルールが適応されるため、最低でもロールオーバーする額と同等の労働所得が必要になる。
これは、529プランの資金をペナルティなしで活用できる大きなメリットですが、口座の開設期間や拠出期間に制限があるため、慎重に計画することが重要です。
529プランからRoth IRAにロールオーバーできるようになったのは、嬉しいニュースですね! ただし、実際にRoth IRAへ移すには、細かい条件があるので要注意です。
それよりもまず、大事なのは本当にRoth IRAに移すべきかどうかを考えること。529プランの資金は、教育費として使うのが本来の目的なので、そちらを優先したほうがいいケースも多いです。
たしかに、529プランはファイナンシャルエイドの受給に影響する可能性があるというデメリットもありますが、うまく活用すればしっかり大学資金を準備することができます。
まとめ
529プランは教育資金の準備に最適な制度ですが、学費以外で使うと税金やペナルティがかかるため注意が必要です。特に、カリフォルニア州のように追加の州税ペナルティがある州では、より慎重に計画を立てることが大切です。
さらに、2024年以降は529プランの未使用資金をROTH IRAへロールオーバーできる新しい選択肢が登場しました。これを活用すれば、教育資金として使わなかった分を将来の退職資金として有効活用できます。
賢く活用すれば、税制優遇を最大限に生かしながら無駄なく資金を使うことができます! ご自身の状況に合った方法を見つけて、上手に活用していきましょう!
※この記事を書く際に利用した参考サイト:
https://www.savingforcollege.com/article/roll-over-529-plan-funds-to-a-roth-ira#h-should-you-convert-529-funds-to-a-roth-ira-now-or-wait
https://www.theentrustgroup.com/blog/529-rollover-to-roth-ira
https://www.sewkis.com/publications/new-option-rollover-from-529-account-to-roth-ira/