アメリカで子供の大学費用を考えると、多くの人が最初に思い浮かべるのは「529プラン」かもしれません。しかし、それ以外にもリタイアメントアカウントや株式投資を利用して資金を増やす選択肢もあります。アメリカでは毎年インフレ率が約3%上昇し、大学費用も高騰しているため、賢い資産運用が重要になります。今回は、リタイアメントアカウントとセミナーでご紹介しているインデックス連動型終身保険(IUL)を比較し、それぞれの利点と欠点を見ていきましょう!
リタイアメントプランとは
リタイアメントアカウントは、その名のとおり、リタイア後に使用する目的のアカウントです。
リタイアメントアカウントは、その名のとおり、リタイア後に使用する目的のアカウントです。会社にお勤めの方は、401Kというリタイアメント用のアカウントをお持ちの方も多いかもしれません。他にも、個人で開設できるリタイアメントアカウントがあります。個人年金プランとも呼ばれ、主に以下の2種類に分けられます。
これらは、リタイアメントの積み立てプランとして、多く利用されています。
- IRA
- Roth IRA
最近では、ROTH IRAを大学費用のための積立アカウントとして活用するケースも増えてきています。
インデックス連動型終身保険 IUL

インデックス連動型終身保険(IUL)とは、インデックス(株式指標)に連動しながらお金を増やしていく、積み立て型の生命保険です。
IULのメリット
- 生命保険:生命保険なので、予期せぬ不幸があっても(例え契約した次の日でも)死亡保障金が全額支払われる
- 非課税の死亡保障金:遺族受け取る際に所得税は課されません
*連邦相続税の免税額を超える財産を相続する場合(生命保険金を含む)、相続税が課される可能性があります。 - ダウンサイドプロテクション:不況時に株価がどんなに下がったとしても最低金利(例:0%)が適用されるため、株価が下落しても契約のキャッシュバリューは減りません。
- リビングベネフィット(無料):重病(Critical Illness)や末期疾患(Terminal Illness)の場合に保険金を前払いで受け取れる。
※Critical Illness 重病疾患は、保険のポリシーによってついていない場合もある - カレッジプランニングに有利:FAFSAフォームでキャッシュバリューを資産として申告する必要がなく、ファイナンシャルエイドの受給に有利
- 銀行より高い利率の可能性:適切な運用で銀行預金を上回る利率を得られることがある
IULのデメリット
- 加入条件:生命保険なので、健康でなければ加入できない
- 中長期向け:最低でも10年は寝かせておかないとお金の伸びはよくない
- 利回りの上限(CAP):株価利回りが高くても、契約で定められた上限(例:10%)以上のリターンは得られません。
(例:株価の利回りが15%としても、IULでは10%)
※特約を購入することで、上限を上げることも可能 - 早期解約時の手数料:早期解約には、Surrender Charge(サレンダーチャージ)と呼ばれる手数料がかかる。
※保険のポリシーによって異なりますが、手数料がかかる期間(Surrender Period)は通常10年~15年 - 費用についての注意点:IULには保険料や管理費、特約費用が含まれており、これらが運用リターンに影響を与えることがある
Roth IRAのメリット、デメリット
Roth IRAは、個人で開設できるリタイアメントアカウントです。
ROTH IRAのメリット
- 税制優遇:税引き後の所得で拠出するため、運用益と引き出しが非課税(条件付き)。
- 教育費用に適した選択肢:大学費用として利用する場合、ペナルティなしで元本部分を引き出すことができるため、柔軟性が高い。
- 投資で資金を増やせる可能性:市場での投資運用によって、大学費用を効率的に増やすことが期待できる。
- リタイアメント資金としても活用可能:余った資金を将来の老後資金としてそのまま運用できるため、使い勝手が良い。
ROTH IRAのデメリット
- 拠出限度額が低い:年間の拠出限度額が決まっており、高額な大学費用を賄うためには十分ではない可能性がある。
- 収入制限がある:一定の収入を超えると拠出資格が制限される。また、Roth IRAを直接開設できない場合、Backdoor Rothという方法を活用する必要があるため、手間がかかる。
- 投資リスク:市場変動により元本割れのリスクがある。
- 教育以外の用途に制限:引き出しは柔軟であるものの、教育費以外での使用には引き出しルールが適用されるため注意が必要。
- 長期運用向け:短期的な運用では十分な利益が得られない場合がある。
- 税制優遇:税引き後の所得で拠出するため、運用益と引き出しが非課税(条件付き)。
- 柔軟な引き出し:学費や初回住宅購入に使用する場合、ペナルティなしで引き出せるが、引き出したお金はFAFSA上で申告する必要がある。引き出した金額がファイナンシャルエイドの金額に影響することもある
- 運用益の引き出し:運用益(元本から発生した利益)を引き出す場合、非課税条件("Qualified Distribution")が適用されます 運用益の引き出しが非課税になるためには、下記のいずれかに該当すること
→アカウントが少なくとも5年間保有されていること。
→59歳半以上である。
→障害者である。
→初めての住宅購入のため(生涯最大$10,000まで)
→死亡により相続人が引き出す場合。
→大学費用の支払い (所得税は発生する)
→医療費が一定の所得割合を超える場合
→出産または養子縁組(最大$5,000まで)
リタイアメントアカウントと生命保険の比較
リタイアメントアカウントと生命保険は、それぞれ役割が異なるため単純に比較することはできませんが、以下のポイントが参考になります:
- Roth IRAは大学費用を増やす投資先として活用できますが、リタイアメント用のアカウントでもあるため、老後資金が十分でない場合は慎重に検討する必要があります。大学費用を引き出した場合は、ファイナンシャルエイドに影響がある場合がある
- IULは中長期での運用が前提ですが、ファイナンシャルエイドに有利な点が特徴です。
どちらを選ぶかは、「大学費用が優先か」「老後資金が優先か」によって異なります。
まとめ
※本記事は、可能な限り正確な情報を基に執筆していますが、内容の正確性や最新性を保証するものではありません。情報の使用にあたっては、必ず専門家にご相談いただき、最終的な判断は自己責任でお願いいたします。
冒頭でもお伝えしていますが、リタイアメントアカウントを学費の一部にするということは可能です。もし、すでにご自分や配偶者のリタイアメント資金が十分すぎるほどあるので、一部を学費にしたいという場合は、問題ないかもしれません。ですが、ご自分の老後資金も増やしている途中ということであれば、しっかりとお考えください。
アメリカの大学費用は高額です。ですが、老後に必要なお金も長い目でみると、大学費用と変わらないくらい必要になるかもしれません。他にも複雑な税金のルールもからみますので、ROTH IRAから大学費用としてお金を引き出す場合は、必ずCPAや金融機関のご担当者にご相談ください。大事なことなので何度も言いますが、「独自」の判断だけで行動するのは、非常に危険です。大事なお金だからこそ、独自の判断で決断をするのではなく、プロの意見やアドバイスを聞くのがよいでしょう。